美容師さん必見!その領収書、経費で落とせるの?
大変ありがたいことに多数の美容師の皆様から当法人に確定申告のご依頼をいただいておりますが、特に業務委託型のヘアサロンで働き始めて間もなく、確定申告の経験が浅い方から一度は必ずされる質問があります。その質問とは
“何が経費になるの?”
です。
経費になる金額が大きくなればなるほど税金の金額は少なくなるのでなるべく多く経費を計上したいという思いは大変よく分かるのですが、本来は経費にならないものまで経費として確定申告してしまうと、税務調査があった際には延滞税や加算税など余計に税金を取られてしまうかもしれません。そこで、経費になるものとならないものについて分かりやすく解説していきたいと思います。
経費とは?
そもそも経費とは何でしょうか?日本の税金の様々なルールを定めている国税庁のHPを見ますと以下のように記載されております。
事業所得、不動産所得および雑所得の金額を計算する上で、必要経費に算入できる金額は、次の金額です。
(1)総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
(2)その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額
なんだかややこしく書かれておりますが、要するにヘアサロン業務で売上をあげるために関連した出費は経費にしていいよということです。逆に言うとヘアサロン業務に関係のないプライベートで利用した出費等は経費として認めませんということになります。こうした考え方について、税金の世界の専門用語では「事業関連性」と言いますが、経費かどうかを判断するには購入した物品・サービスについて「事業関連性」があるかを考えることになります。
経費になるものの例
何が経費になるかは「事業関連性」の有無で決まるというところまでご説明しましたが、それでは一体どういったものが経費になるかについて、美容師の皆さんからお預りする領収書でよくお見かけするものをピックアップして考えていきましょう。
- 施術に利用する用具関係の出費
お店側で施術用具を用意しておらず、ご自身で用意しなくてはならないケースがよくありますが、そうした場合の施術用具の購入費用は経費になります。主なものとしてはハサミです。また、ハサミは定期的なメンテナンスが必要になりますが、そのようなメンテナンスのための出費も同じく経費になります。コーム、ブラシ、ドライヤーなども、自前のものを利用している場合には経費に出来ますので、それらを購入した時には、きちんと領収書を保管しておきましょう。なお、1点あたり10万円以上の用具を購入した場合には、全額をその年の経費とするのではなく、一旦固定資産として計上した上で、数年間かけて減価償却という形で費用化しなくてはならないケースもあるのでご注意下さい。
- カラーリング等の施術で使用する薬剤などの消耗品の代金
施術で使うカラーリング薬剤やシャンプーの代金は経費になります。また、お店から薬剤等の利用量に応じて課金されるという形式のお店もありますが、それらの課金分について支払を行った場合も経費になります。
- 交通費
自宅からお店までの交通費や、道具や薬剤を購入するための交通費などは経費になりますが、皆さんの生活環境ごとに様々な通勤形態があると思いますので、利用する交通機関別に説明していきたいと思います。
【電車やバス】
定期券を購入している場合は、領収書を貰えると思いますので問題ないかと思います。一方、定期券の範囲外の場所に業務上の理由で出かける際、電車やバスを利用することもあるかと思いますが、基本的に領収書が貰えないケースがほとんどだと思いますので、そのような場合には代わりに交通費表のようなまとめ表を作っておいて、どこからどこまで何のために何で移動したかを残しておくようにしましょう。またSuicaやPASMOのような交通系ICへチャージした金額は経費になるかについてよく質問されますが、結論から言いますと基本的にNGです。と言いますのも、皆さんもご存じのとおり交通系ICは電車やバスの利用のみならず、コンビニや飲食店等でも利用出来るところが増えてきており、必ずしも交通費として利用したということが明確に出来ないからです。Suicaへのチャージ費用が交通費として経費に認められる一方で、Suicaを利用して購入した物品分を経費として認められたら、経費の二重計上が出来てしまうことになりますので、交通系ICへのチャージ代金は原則的に経費として認められない理由がお分かりになるかと思います。
【タクシー】
サロン仲間との忘年会帰り等、業務上の理由でタクシーを利用した場合には、経費になります。貰った領収書に、何のためにどこからどこまで移動したかについて書いておいて忘れないようにするか、上に記載している交通費表の中にタクシーも入れておいて、同じように記載しておくことをおすすめしております。
【自家用車】
自家用車で通勤している場合には、自家用車の購入費用についても経費として計上することが認められております。ただし、購入時に一括で経費にする訳ではなく、自家用車を固定資産に計上した上で数年にわたって減価償却という形で経費にすることができます。また、通勤や業務用物品の購入等に必要なガソリン代や駐車料金も経費にできます。一方注意点ですが、自家用車を通勤のみに利用するということは滅多になく、プライベートでも利用することがほとんどかと思いますので、そのような場合には購入代金やガソリン代の全額を経費にすることは出来ず、車をどの程度仕事のために使っているかという割合に応じて経費にしなくてはなりません。
【飛行機や新幹線】
大手グループのサロンで仕事をされている場合は、マネジャー会議などで各地へ出張に行くケースもあります。そのような場合の飛行機代や新幹線代なども当然経費になりますので、大きな金額の領収書は忘れないようにしましょう。一方、仕事に関係のないプライベートの旅行で飛行機や新幹線を利用するケースもあるかと思いますが、これらの旅費は金額的に大きいために税務調査時によく見られる項目になりますので、うっかり確定申告の際に経費として計上してしまわないように気を付けましょう。
- お客さんとの飲食費/同業種の方との情報交換を目的とした飲み会の参加費用
なじみのお客さんとごはんを食べに行ったというようなものは、接待交際費として経費にすることができます。また、同業の方や業者の方との情報交換などのために参加する飲み会等の費用も経費となります。税務調査の際は、誰と行ったのかについて問われることが非常に多いので、参加者全員の名前を忘れないように領収書に書き残すことをおすすめしております。仕事に関係のない友人や家族と行ったものは当然に経費になりませんのでご注意下さい。
- お住まいの住宅家賃
お住まいの住宅に関する家賃については基本的には経費にならないと考えて下さい。皆さんがお仕事をされる場所は基本的にご自宅ではなく所属先のサロンになるため、継続的に何人ものお客様をご自宅にお呼びして施術を行う等の特殊なケースでない限り、住宅家賃は経費として認められない可能性が高いです。
- 服の購入代金
服の購入代金については基本的には経費にならないと考えて下さい。そもそも服はご自身の趣味やこだわりを大きく反映するもので、その服じゃなきゃどうしても仕事が出来ないということにはなりませんし、仕事のみならずプライベートでも着ることが出来てしまいます。つまりプライベートでも着られる服は、仕事で着用しているという意味で一部「事業関連性」があるものの、プライベート色が圧倒的に濃いだろうと判断されてしまうことが多く、もし税務調査があった場合に、どれだけ「プライベートでは一切着てないよ!」と言い張ったところで税務署からは否定されてしまう可能性が非常に高いです。店名入りの服やユニフォーム等、サロン内でしか着用しないことが明らかなもの以外の衣服類の購入費用については、原則的に経費として認められないものとしてご注意下さい。
まとめ
皆さんが確定申告を行う上で、経費に含めていいもの、含めてはいけないものについての理解は深まったでしょうか?上記で説明したもの以外の領収書についても、経費として計上出来るか判断に迷った際には「事業関連性」を意識して、それらの出費が果たして美容師業務として必要なものかをじっくり考えてみましょう。
税理士法人ユナイテッドでは多数のヘアスタイリストさんから確定申告のご依頼を承っております。領収書を送っていただくだけで確定申告を任せることができるコースもありますので、お仕事が忙しくて確定申告まで手が回らない、税務調査が怖いので美容師さんの確定申告に精通したプロに正しい処理をお願いしたい等のご事情がございましたら、ご連絡いただければと思います。