美容室開業融資の受け方|日本政策金融公庫・制度融資のポイントと事業計画書作成術【税理士解説】」
独立して美容院を新たに開業しようと考えている美容師さんが持つ最も大きな悩みといえば、やはり開店資金のためのお金をどうやって工面するかですよね。
将来の独立に備えてずっとお金を貯めていて十分な自己資金がある方や、親御さんから資金提供を受けられる方はいいですが、ほとんどの方は開店資金の全てを自己資金等でまかなうことは難しいと思います。そこで、開店資金の不足分は融資を受ける必要性が出てくるのですが、
・融資を受けるにあたってどこの金融機関に行けばいいのか分からない
・いくらお金を借りればいいのか分からない
・事業計画書の作成にあたって注意すべきポイントが分からない
・融資の面談で何を聞かれるのか分からず怖い
上記のようなお悩みを持つ美容師さんはとても多いと思います。
そこで、本記事では独立開業される美容師さんに融資に関する理解を深めていただき、そもそも美容院の開業にあたって本当に必要な融資額はいくらなのか、融資を希望額どおり受けやすくするためにはどのような点に気を付ければ良いのかについて税理士の視点から解説していきたいと思います。
1. 美容室開業時の主な融資元
お給料を貰っていたり、面貸しスタイリストとして歩合報酬で稼いでいるスタイリストさんにとっては、住宅ローンでも組んでいない限りは金融機関で融資を受ける経験はほぼないものと思います。それでは開業される美容師さん達はどこで融資を受けているのでしょうか?融資を行ってくれる金融機関としては、皆さんが良く知っている全国区の三菱UFJ銀行やみずほ銀行等のメガバンク、地域密着の地方銀行や信用金庫、信用組合等がありますが、それらとは別に政府系の金融機関として日本政策金融公庫というところがあります。こちらは初めてお聞きする名前だという方も多いと思いますが、開業時にはとても心強い味方になってくれる金融機関ですので、開業時の融資申し込みを日本政策金融公庫で行う方は非常に多いです。
日本政策金融公庫には「新創業融資制度」があり、創業時の強い味方となります。この制度は、創業前または創業後おおむね2年以内の事業者を対象に、自己資金の1/10以上を準備していることを条件に、最大3,000万円(うち運転資金は1,500万円まで)の融資を受けられるものです。利率は令和7年8月現在で年1.5%〜2.4%程度(利用者の条件により異なる)で、返済期間は設備資金で最長20年、運転資金で最長7年まで設定可能です。また、担保・保証人は原則不要で、信用保証協会を通さず直接公庫と契約するため、初めて融資を受ける美容室オーナーでも利用しやすいのが特徴です。
また、各地方自治体において所謂「制度融資」と言われるものがあり、これは銀行や信用金庫を通じての融資であるものの、信用保証協会の保証を受けることで創業時の融資が受けやすくなるものです。また、自治体によっては利子補給金という形で利子の一部または全部について補助を行ってくれることがあります。これらの制度についても各自治体によって異なりますが、金融機関の担当者に確認することがお勧めです。
各種金融機関で融資を受けるにあたっては、それぞれメリット・デメリットがあるので、よく検討した上で申込を行いましょう。
2. 必要な融資額の決め方
開業に必要なお金といってすぐに思いつくのは、お店を借りるのに必要な敷金や内装工事代、美容器具等の購入費あたりでしょうか。しかし、実は開業に必要な融資金額はこれだけではありません!皆さんが美容院の開業を行った場合、家賃や水道光熱費は必ず支払わなければなりませんし、薬剤の仕入を行った場合、宣伝広告を行った場合等にも利用状況に応じて支払いが必要になってきます。これらの支払いは売上が上がらなかったとしても必ず支払わなくてはならないものなのです。開業して数か月は知名度が低く、固定客が多くない状況の中で、生活に支障が出ないようにきちんと支払いを行えますか?つまり、融資額を決定するにあたっては、開業資金のみならず、開業後に必要な運転資金も考慮しなくてはならないことが分かると思います。
運転資金として借入を行うべき金額は、事業を行ったことのない方の場合ですとなかなか計算が難しいところでもありますので、融資の支援を積極的に行っている公認会計士・税理士等に依頼して適正な借入金額を算定するお手伝いをしてもらうと安心出来るかもしれません。
3. 事業計画書の作り方
融資をしてもらいたい金額が決まり、いざ融資の申し込みに!と金融機関へ向かうと、担当者から必ず求められるのが事業計画書の作成です。事業計画書とは、簡単にお伝えしますと、予定している事業内容や戦略、開業後の数年間に渡っての売上や利益の見込み、資金繰りの見込み等を説明するための資料です。
金融機関は、事業計画書を見て、将来性のある事業か、収益性に問題ないか、無理のない返済が可能かどうか等を見極めた上で融資を行うかどうかの判断を行うため、事業計画書をいかに説得力のあるものに仕上げるかが融資を引き出すためのキーとなってきます。融資を受けた後の返済ができて、資金ショートを起こすようなことがないことを納得してもらう必要があります。
ここで重要なのは、夢物語の数値を書けばいい訳ではなく、自身の経営戦略に基づいた現実味のある数値で事業計画書を作成しなくてはなりません。初年度の売上高をずっと満席想定で試算していたとしたら、そのような計画書を信じてもらえるでしょうか?いかに自身のビジネスを客観的かつ現実的な目線で見極められるかが問われております。また、金融機関によっては「事業継続力強化計画」や「SDGsへの取組」等も加点評価されるケースがあります。
独力で説得力のある事業計画書を作成する自信のない方は、融資の支援を積極的に行っている公認会計士・税理士等に依頼して事業計画書の作成を手伝ってもらうのもいいでしょう。
4. 融資面談のポイント
事業計画書も作成し、最終的には金融機関の担当者との面談があります。融資にこぎつけるまであと一歩です!面談時は基本的に1.3で説明した事業計画書の内容に沿って質問されることが多いです。完璧に説明出来ずとも、ご自身の創業にかける熱意や将来のビジョン、計画性等をしっかりと伝えられれば問題はありません。事業計画書を作成した時のことをしっかり思い出し、提出した事業計画書の内容と質問への回答との間に矛盾が生じないように誠実に質問に対応していけば担当者に好印象が与えられます。しかし、数字に弱いので面談で事業計画書の内容どおりにきちんと回答出来るか不安…そんな方もいらっしゃると思います。そのような方は、事業計画書の作成等をサポートしてくれた公認会計士や税理士にお願いすれば同席して貰えるかもしれませんので、不安な旨を伝えて同席を依頼してみて下さい。こちらは金融機関によってはお断りされることもあります。なぜならご自身の言葉で話せない経営者を信頼できますか、という視点にも気を付けてください。
まとめ
美容室の開業時に融資を申し込むにあたって、よくあるお悩みについて回答していきましたが、融資の申し込みを行う際に気を付けなくてはならないポイントは何となくつかめましたか?開業時の融資について説明した分かりやすい書籍等もあるので、独力で何とかしたい!という方はそういったものを参考にしつつ、希望額を引き出せるように頑張りましょう。
一方、数字に弱く、独力で事業計画書の作成等を行う自信がないという方については、専門家に頼むのも手っ取り早い一つの方法です。たとえば、創業時から税理士と顧問契約を結んでしまえば、開業時融資の支援を無料で行ってもらえるところもありますし、開業が上手くいってビジネスが軌道に乗った際に、新たな店舗の開店資金について追加の融資についてもアドバイスが受けられるので、長い目で商売を成功させたい方には顧問契約がおすすめです。
税理士法人ユナイテッドは、金融機関出身者や一般事業会社にて資金調達経験が豊富な公認会計士・税理士が所属しているため、融資に精通した専門家による親切かつ丁寧なサービスの提供が可能となっております。融資について少しでも不安を抱えている方、お悩みの方はお気軽にお問合せ・ご相談下さいませ。